【JJC通信】平賀冨美子の花と人との物語③ 一言主神社の黄葉と談山神社の紅葉 

 深く高く澄んだ秋の空に、紅や黄の葉が
照り映える様は、格別の趣があります。


奈良県西部、葛城山金剛山にまたがる葛城古道の一角に、
葛城一言主神社(かつらぎひとことぬしじんじゃ)があり、
その境内に、樹齢1200年と言われる
銀杏の古木があります。


乳銀杏ともいわれ、健康な子供を授かり、
母乳が良く出るようにとの信仰を集めています。


ことに美しい黄色に染まる秋は、遠くからでも
この銀杏の木が見えて、色にも大きさにも
圧倒される大樹であり御神木です。


 日本書紀・古事記に登場するこの神社の祭神の
葛城之一言主大神(かつらぎのひとことぬしのおおかみ)は、
凶事も一言、善事も一言で託宣する神様です。


雄略天皇の行列が葛城山に登っているときに、
向かいの山を天皇一行と同じ装束で登る一団があり、
名乗りあったところ葛城之一言主大神であったので、
雄略天皇が、太刀や弓矢を拝礼して献上した、
という故事が記されています。







 葛城古道の端、風の森という地区は、
日本の原風景というような農村で、
日本の水稲栽培発祥の地ともいわれています。


この地を歩いた時は丁度稲の穂が重く垂れて、
稲の黄金色にも感動しました。


こんなに見事な稲は今までに見たことがなく、
「豊穣」という言葉がこれほど似合うということを
感じたのも初めてでした。


写真がないので、風景をお伝えできないのが残念です。


 黄色といえば、橿原のホテルで夕食の折、
フロアスタッフの青年に季節のカクテルを聞いたら、
今の時期は特に無いという言葉が返ってきました。


食事が終わる頃、くだんの青年が
「食事が終わったらバーへいらっしゃいませんか」
と声をかけてくださり、バーの存在を知らなかった
私達は吃驚しながら、案内されるままにバーに入ってゆくと
カウンターの上に置かれていたのが写真の
鬼柚子(獅子柚子とも)でした。


私達が食事中に大急ぎで自宅に戻り、
鬼柚子の実を持ってきてくれたとのこと。


それでつくっていただいたカクテルの美味しかったこと。


青年はほどなくして、ホテルの仕事から農業に変わるとか。


古代の地で未来の農業の夢を語る
青年の熱い言葉と共に、忘れられない出来事になりました。







 奈良県多武峰(とうのみね)にある談山神社は、
その昔中大兄皇子(後の天智天皇)と
中臣鎌子(後の藤原鎌足、藤原氏の始祖)が、
極秘の談合をした場所として知られています。


飛鳥板蓋宮において蘇我入鹿を討った乙巳の変から
大化の改新が成り、中央統一国家及び文治政治が
成し遂げられました。


鎌足の没後、遺骨の一部を改葬して出来た
十三重塔(現存のものは1532年再建)は、
木造十三重塔として現存する
唯一の貴重な建造物でもあります。


その歴史的な場所は、今では春は桜の、
秋は紅葉の名所としても名高い所です。


ここは赤い色の紅葉が見事で、
3000本の楓の紅葉は、言葉通り
「全山燃えるよう」に彩られます。


 神話や歴史に由緒のある土地にたつと、
人物や史実が身近に感じられて、
その風景も愛おしく想います。


国を想う中大兄皇子と中臣鎌子の熱い心情が、
紅葉の色をさらに深めているのではないかと・・・
と思える、秋の一日でした。





平賀 冨美子


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