【JJC通信】「自分はまだ大丈夫」と思った時こそ、事前準備を始める時期です。 

介護者メンタルケア協会代表を務める
橋中今日子です。

私は、52歳で大腸ガンで他界した父を
看取った後、クモ膜下出血や進行性の
難病で寝たきりになった母、
大正10年生まれの認知症の祖母、
重度知的障害の弟の3人を、一人で
21年間介護してきました。

仕事と介護の両立で職場の人間関係が
悪化したり、介護疲れや介護うつに
陥ったりした経験を生かし、今は家族を
介護する方の心のケア、企業での
介護離職予防に向けての研修、行政や
医療・福祉施設で介護虐待予防の
研修などを行っています。

「介護者メンタルケア協会」を設立して
今年で4年目になります。

幣協会に寄せられるご相談は、
のべ800件以上にのぼります。

家族の介護をしている方からの
ご相談のうち、6割以上が認知症に
まつわるものです。

数々のご相談から見えてきたのは
「認知症は気づかないうちに進み、
大トラブルが起きて初めて
表面化することが多い」ということです。

認知症は、脳細胞の器質的な変化に
伴う症状で、誰でもなり得る疾患です。

そして、年齢が上がるにつれて
発症率が急増します。

現在、65歳以上の7人に1人が認知症を
発症しています。

これが75歳以上になると
5人に1人、85歳以上になると、
なんと2人に1人が認知症を
発症しているのです。

超高齢化社会に突入した現代では、
誰もが認知症になる可能性があり、
また、認知症になった家族を
介護する時代になりました。

認知症の中でもっとも多いのが
「アルツハイマー型認知症」です。

認知症になったからといって、
突然全てができなくなるわけでは
ありません。

買い物や家事をそつなくこなし、
スポーツなどの趣味や旅行を
楽しむ片もたくさん
いらっしゃいます。

忘れっぽくなることが増えるものの、
生活においては一見問題が
ないように見えます。

ただ、症状が進むと、計画や段取り、
各種手続きなどがうまくできなくなります。

同じ生鮮食品を頻繁に購入して
腐らせてしまったり、家事などの
日常生活や、周りの人との関係に
支障をきたすことがあります。

また、勧められるがままに高額な
商品をローンで買わされてしまう
といった、消費者被害を受けることも。

さらに判断能力が落ちてくると、
火の管理など危険予測が困難に
なるなど、様々な問題が起きてきます。

預貯金があり、年金も受給しているのに、
銀行から引き出す作業ができなくなって
生活苦に陥るといった、財産管理の能力が
低下することもあります。

財産管理に関しては、認知症になると
手続きが煩雑になり、周りの人も
巻きこむことになりかねません。

久しぶりに実家に帰った娘さんが、
光熱費の督促状が山積みになっていて
驚いたというケースがありました。

この場合は、生活費が
足りなかったわけではなく、年金が
振り込まれる口座と光熱費の
引き落とし口座が別だったため、
毎月欠かせない入出金の手続きが
困難になっていました。

また、督促状が届いても
どう対応していいかの判断が
できなくなっていました。

この段階で初めて、認知症が発覚したのです。

一人暮らしをしているお母様が、
ゴミの出し方や曜日、場所が
わからなくなり、ご近所トラブルに
発展してから認知症が発覚した
ケースも珍しくありません。

実家の隣の人から「なんとかしてくれ!」
と電話がかかり、慌てて訪れると、
周囲に異臭が漂うゴミ屋敷のように
なっていたという相談もありました。

本人も周りも気がつかないまま、
知らず知らずのうちに進行していて、
突然発覚するのが認知症です。

外出の回数が減った、料理の回数が減った、
ゴミ出しや部屋の片付けが
滞ってきているようだと感じたときは、
認知症のサインかもしれません。

「家族が認知症かもしれない」
そう感じたときは、最寄りの
「地域包括支援センター」に
相談しましょう。

地域包括支援センターは
「介護のよろず相談所」的存在です。

ここでは、介護保険の申請だけではなく、
電話勧誘販売や家庭訪販などの
消費者被害にあった時や介護虐待が
懸念される時、成年後見制度について
手続きを進めたい時などにも相談に
乗ってくれます。

また、「母が亡くなってから、
父が急に食事をとらなくなって心配」
「物忘れの症状が出ているけれど、
通院を勧めると怒ってしまう」といった、
介護が始まっていない段階での相談もできます。

認知症は、ご家族も、あなた自身も、
誰もが発症する可能性があります。

しかし、認知症に備えて
「事前に準備が必要だ」と頭では
理解していても、つい
「自分にはまだ早い」
「自分はまだ大丈夫だ」と
先送りしたくなるものです。

特に、元気なご両親に
「いざという時のための事前準備をしようよ」
と切り出すのは抵抗がありますよね。

けれども、現実には、高齢者の
車の事故、詐欺被害、資産凍結などの
問題が起き続けています。

「まだ早い」「まだ大丈夫」と
思った時こそ、事前準備を始める時期です。

ご家族に事前準備を勧めるのに
抵抗がある時は、「もし、わたしが
認知症になったときのために、
今の段階から事前準備をしている」
とお話して、自然に情報を提供してみる
というアプローチもできます。

あなた自身、あなたの大切な人を
守るためにも、家族で話しあい、
介護や資産管理のプロに相談することから
始めてみましょう。

介護者メンタルケア協会

橋中今日子
介護者メンタルケア協会代表
理学療法士・メンタルコーチ

著書・監修
認定調査での伝え方のヒントや
心が軽くなるヒントが掲載

NHKガッテン!健康プレミアム+(プラス)vol16
がんばらない介護(ダイヤモンド社)

親の入院・介護で困らない(宝島社)

イラスト ©めぐろのY子
出典「結局 大丈夫 大丈夫」上下巻

“【JJC通信】「自分はまだ大丈夫」と思った時こそ、事前準備を始める時期です。 ” に1件のコメント

  1. 「がんばらない介護」は、父に介護認定が下りる前に拝読させていただきました。(父は利用することなく他界してしまいましたが、他界の3日前に通知が届き、「要介護4」でした)

    両親には「がんばらない介護」に記載の内容を伝え、介護する側・される側共に心構えをすることができました。どうもありがとうございました。

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