【JJC通信】ワイン回顧2020〔愛酵会No.6〕 

せっかく2019年末に「愛酵会」を立ち上げながら、
2020年はコロナ・ウイルスのために活動が
頓挫してしまいました。


埋め合わせに、個人的に2020年のワイン生活を
ふり返ってみました。


2021年は1日も早くリアル飲み会が
再開できることを祈ります。


おいしいワインと料理を提供してくださる店の方々、
どうぞウイルスにも人災にも負けず生き抜いてください。


いつか必ず行きますから!


2月11日 多摩市で愛酵会「カベルネ・ソーヴィニョンの集い」。
7人が参加し、チリ、オーストラリア、
アメリカ・カリフォルニア、ルーマニア、
そしてフランス・ボルドーの5銘柄を、
ピッツァ、チーズ、サラミをつまみに3時間楽しみました。


「日本酒は工業的な面が強いが、
ワインはほぼ農業」という指摘があり、
もっともだと思いました。


4月~ 緊急事態宣言、家飲みで日本ワインに集中。


山梨、長野、山形以外にも、宮崎(都農)など
各地ですばらしいワインが生まれていることに感動。


これまで飲まず嫌いで見下していた
マスカット・ベーリーAも、良いものは実は
なかなか秀逸で、ディナーワインとして十分通じることを
発見しました。


山ぶどうのワインは果実味が濃く酸味も
しっかりしているのですが、合わせる料理が思いつかず…。


6月 玄米で作った無濾過生原酒に出会う。


人が最初に米で酒を造った時には
精米していたのだろうか、なれずしのような
発酵食を作る際にも、最初から精白した白米を
使ったのだろうかというのが常々疑問でした。


もしそうだとすると、都市の住民が精米した
ご飯を食べるようになる遥か以前から、酒造りや
発酵食品では白米を普通に使っていたことになります。


一方、玄米で酒が造れるのか、できたとしても
糠の臭いや蛋白質の腐敗臭がしてまずいのではないか、
とも思えます。


そこでネットで調べると、何と玄米で造った酒が
売られていました。


千葉県の寺田本家が出している「むすひ」という酒です。


早速ネット注文、同封の説明書によると、
玄米では麹が育たないため、いろいろ試行錯誤の末、
発芽させてから発酵させたそうです。


それってビールとほぼ同じ工程ではありませんか!


で、味は? ばらすと面白くないのですが、
普通の日本酒がライン地方の白ワインだとすると、
玄米酒はシェリー酒かも…。


たぶん「これは絶対ダメ!」という人と
「意外にいけるじゃん!」という人に
くっきり分かれるのではと思いますが、私は後者です! 


7月5日 愛酵会 オンライン飲み会。


開発さんが肝煎りで、各自が下記のワインを入手、
2時間余り楽しみました。


以下は開発さんから皆さんに送られた一口メモです。


「白ワイン ウルフブラス・イエローラベル・シャルドネ
(WOLF BLASS YELLOW LABEL, Chardonnay)


お勧め料理 洋風の魚料理(白身魚のカルパッチョ、
ムニエルなど)、ナッツ、ポテトサラダなど
飲み頃 冷蔵庫で3~4時間以上冷やし、
グラスに注いだ直後~10分。


その後は冷蔵庫に戻す、アイスバケツで
冷やす等温度を維持して下さい。


赤ワイン ロバート・モンダヴィ
ウッドブリッジ・カベルネ・ソーヴィニヨン /
ロバート・モンダヴィ(Robert Mondavi,Cabernet Sauvignon)


お勧め料理 しっかり味のついた肉料理
(ハンバーグ、ステーキ、焼肉など)


飲み頃 冷蔵庫で3~4時間以上冷やし、
グラスに注いだ後10分~20分。


短時間ならボトルのまま置いておく、
可能であれば アイスバケツで
冷やす等温度を維持して下さい。」


9月30日 還暦・退職記念に、ボルドーの
シンデレラ・ワイン「シャトー・ヴァランドロー」を買う。


1万円以上のワインなどレストランですら
頼んだことがありませんでしたが、
こういう機会でもなければ一生縁がなかろうと
清水の舞台から飛び降りるつもりで奮発。


味は…勿論、凝縮されたすばらしいものでした。


ただしヴァランドローなら、2010年に3300円で
買ったサードワイン「シャトー・ベレール・ド・ウィ 2007」
も十分秀逸なボルドーでした。


S字曲線でいうと右端の方で、値段が数倍になったから
味も数倍良いかと言われると、高級オーディオと同じで
薄皮のような微妙な差ではないかと思います。


10月 スモークサーモン自作に挑戦。


日中自由時間が増えたので、以前から試したかった
スモークサーモン作りにいよいよ挑みました。


チップではなくスモークウッドを使うと
結構簡単にできました。


しかも、クレオソートのような燻蒸液の臭いのしない、
まともな味です。


これで、白ワインの友がいつも身近に…。


10~11月 3回にわたって甲府盆地ワイナリーツアー。


10月23日はシャトーメルシャンで昔の醸造場を
見学して長野のメルローの逸品をグラス試飲。


11月8日夜は勝沼ぶどう郷駅近くの
イタリアン・パハソロッテで地元ワインを堪能しました。


シェフの長谷川賢さんは、日本ソムリエ協会主催
ワインアドバイザー選手権で優勝した方だそうです。


翌日は奥野田ワイナリーなど3か所を訪問、生産者から
いろいろと現場のお話を聞くことができました。


11月15日は京王バスのツアーでまるき葡萄酒、
シャトー酒折を訪ね、最後はぶどうの丘の
試飲コーナーへ。


新たにコイン式の銘醸ワイン試飲設備ができており、
結構すばらしいワインを味わえました。


桃の花が美しい2021年4月にもまた行きたいと
考えています。


ご一緒できるといいですね。


12月 1997年2月につけ始めた
ワイン・メモが4000銘柄に到達。


社会には何も役立たちませんが、この記事を
書く時にだけは役に立ちました…。


12月 斎藤幸平氏の『大洪水の前に 
マルクスと惑星の物質循環』という難しい本に挑戦。


氏は2021年1月にNHK・Eテレの『100分de名著』に
講師として出演されるそうで、担当プロデューサーが
「この本が面白い」と勧めてくれました。


晩年のマルクスが、略奪農法や砂漠化、気候変動に
ついての研究者書をかなり系統的に読んで
環境問題に関心を深めていたという内容です。


マルクスがそれを著作に書かなかったため、
これまで誰も気づかずにきたのだそうです。


読後感として、また、山本博
『日本のワイン―本格的ワイン造りに挑んだ
全国のワイナリー』、高橋梯二、原田喜美枝、
小林和彦、齋藤浩『日本のワイン―和英対訳』、
三澤茂計、三澤彩奈『日本のワインで奇跡を
起こす―山梨のブドウ「甲州」が
世界の頂点をつかむまで』、
玉村豊男『千曲川ワインバレー―新しい
農業への視点』などを読むにつけても、
「善いワインを作る」という営みは、
「利潤の最大化・そのための生産拡大」という
主流派経済学の説く原理とは微妙にズレが
あるのではないかと感じずにはいられません。


葡萄の実の収穫を増やして大量生産しよう
という発想では、特に日本の場合まず絶対に
優れたワインは生まれません。


ワインの質は、健康なブドウの木の力に
頼るしかないのです。


栽培・醸造に関わった人たちが
丹精込めたワインは、経済のあり方、
人間と自然の関係についてもいろいろ
考えさせてくれるものだと感じます。


善いワインは人を酔わせて
心地良くするだけでなく、人を賢く
目覚めさせてくれるのかもしれません。


愛酵会 先原章仁