『NHK100分de名著』の7月の番組で、
「ボーヴォワールの『老い』」について、
社会学者上野千鶴子さんが取り上げられました。
テレビが家の中にないため、
いつものことですがAmazon Prime videoで
4回シリーズをまとめて視聴しました。
大変興味深い内容でした。
今回のタイトル
『年齢に抗わない「老い」との創造的共存』
は、私自身がJJCと共に見つめてきた世界です。
もしかしたら、おそらく20代の頃に
ボーヴォワール氏の『第二の性』と共に
『老い』についても書籍を
読んでいたかもしれないのですが、
今の私は紙の本は目がついていけず
専らKindle版のみ購読者です。
という訳で今回は原著ではなく
上野千鶴子先生による
テキスト(Kindle版)のみを拝読しました。
さて、ボーヴォワールは、この著書のなかで、
身体的な能力が問われる職業
(スポーツ選手、舞踊家、歌手、俳優、
芸人、演奏家など)や知的労働者
(数学者、科学者、作家、音楽家、
画家、政治家など)に至るまで、
実にさまざまなジャンルのもの
すごい数の人物を取り上げ、
文献や証言に基づき、彼らの「老い」について
リアリストの眼差しで直視し叙述しています。
上野氏自身もは先輩の学者たちの
背中を見てこられ、50歳くらいから
新しいことが書けなくなってしまうという
実例を体験し読者に同じように思われたら
との恐怖心から、50代でそのご専門分野を
「女性学」の畑(ジャンル)から
「介護」の研究へ転じたと書かれています。
両氏の問いかけは、社会が老いについて
どのように捉えているか、社会に生きる
私たちもまた歴史的にもその影響を受けつつ、
自らが歳を重ねていくことへの
どのような印象や世界観を抱いているのかを、
あらためて見つめ直すことのできる
題材であったと思います。
さて、テキストの表紙には副題として
『年齢に抗わない・・怯むことなく
堂々と老いさらばえよ!』
とあります。
『年齢に抗わない』という点は、
私の世界観と通じるところではありますが、
その次の「怯む」とか「老いさらばえよ」
と言った表現には違和感を覚えました。
それは「老い」に関して、
社会や自分自身が作ったイメージや
偽りの概念に対峙する私達への、
ボーヴォワールや上野先生の
正直なかつ愛に満ちた表現なのかもしれません。
また、もしかしたら、社会学者とは
「抗う」というところにその本質が
あるのかもしれないとも感じました。
20世紀までの人類は、これまで本当に
真面目に、抗ったり、戦ったりして、
ことを正そう、社会を正そうと
してきたのではないだろうか?
しかし、21世紀は違うのではないか?
物事の見え方、捉え方自体、変えてみてはどうか?
そんなことを私は思いました。
本来歳を重ねることで
気になることとはなんでしょうか?
・身に覚えのある身体的・知的能力が
その記憶のように発揮できない
・身体的外観が自分でも好ましくないし、
他者からも好まれないと感じる
・認知症などで認知機能が衰える
などがあるでしょうか。
それらは本当に
ネガティブなことなのでしょうか?
見方や捉え方を変えれば、
本当は素晴らしいことなのではないでしょうか?
誰でも生きている限り歳を重ねますが、
それは誰にとっても経験したことがない事象を
新たに体験していくことにほかなりません。
加齢による各種の現象に、抗うことなく、
ジャッジせずに、ありのままに捉え、
観察しつつ、賢く、丁寧に、前向きに、
柔軟につきあっていくのはどうでしょうか?
JJCの皆さんがすでに実践されていることだと
思いますが。
そこには今までにない新たなユニークな
創造があるかと思います。
『年齢に抗わない「老い」との創造的共存』
という覚悟で、生きることに感謝し
楽しんでいきたいなと改めて思いました。
参照した番組と書籍はこちらです。
ZOOMなどで皆さんとディスカッション
できたらよいなあと思いました。
ご感想などもお待ちしています。
NHK 100分 de 名著
ボーヴォワール『老い』 2021年 7月 (NHKテキスト)
Amazon オンデマンド
NHK|7月の名著「老い」
伊藤礼子
充実人生クラブ