【JJC通信】哀しみの保健室 vol.7 私達を支える8つの繋がり<思想> 

『哀しみの保健室』グリーフケアCafe
とりでを開催しております、前川美幸です。


台風19号の被害により多くの方が
今なお、もと通りの生活の再建への
目処が立たない中、懸命に復旧作業に
取り組んでおられます。


尊い命が犠牲になられたと耳にする度、
ご冥福を念じ、遺された方々が少しでも、
心穏やかに故人を偲ぶ機会を持てるよう、
切に念じ申し上げるばかりです。


JJC通信連載7回目となる今回は、
人生を支える大切な繋がりとして
「思想」をとりあげます。



大切な存在との死別により、
様々な断絶感が引き起こりますと、
それらの信条や理念が崩れ去り、
何も信じられない心境に陥ります。



個人にとっての信条や理念と、
深いレベルで密接に繋がっているのが、
自分自身に対する認識です。


自己像やセルフイメージとも
言われるものですね。


これまで確信してきた信条や信念、
理念が崩壊してしまうと、
自分の存在意義も揺らいでしまいます。


人は自分が思っている以上に、
これまで信じてきた人生観や
価値観により、自己信頼の基盤を
支えられているものです。


様々な人生経験によって培ってきた、
信念や信条との間に築き上げてきた絆が、
断絶されてしまうと、深く傷つきます。


例えばこれまでは神仏に対する感謝を、
日々口にしていた人が大切な人を失い、
突然信仰に疑念を抱くことがあります。 


「あんなに良い人だったあの人が、
なぜ死なねばならなかったのか!?」と、
そのような運命を与えたと感じる神仏に、
怒りや憎しみ、失望や絶望を感じてしまい、
どうにも信じ難くなってしまうのでしょう。


遺された立場からは、大切な故人が、
永遠の別れを意味する「死」という、
最大の不幸を背負わされたとしか思えない。


そのような試練または運命をもたらした、
相手があるならば呪いたい衝動に駆られ、
宗教全般に不信を抱くことになります。


とくに亡くなった当人自身が何らかの、
熱心な信者であった場合はなおさらです。


「思想」は信仰に限らず、
健康志向や哲学的思想、先達の考え等、
その人自身が大切だと感じてきた、
<自分よりも大きな考え>も含みます。


それらは「死別喪失による断絶」により
過去の信頼が大きく覆ることがあります。


それらが本人にとってのより大きな、
精神的支柱であった場合にはとくに、
断絶感からの孤独が重症化します。


そのように「もう何も信じたくない」
「繋がりたくない」と失望した方が、
また再び何かを信じるようになるには、
長い年月がかかることも珍しくありません。


故人と共に過ごしてきた軌跡を、
その人なりに辿ることによって、
故人が大切にしてきた「思想」と、
再びつながる「結合感」を
この身に感じることもあります。


グリーフカウンセリングや、
グリーフワークに取り組むことが
こうした「思想」との断絶感を癒し、
自分の人生を取り戻すのに役立った、
そのようにおっしゃる方もあります。


ひとりでも多くの方が、
哀しみを分かち合う場に出会うことで、
長く深く続く喪失の悲嘆に沈みながらも、
自分らしく生きる道標を見いだしてほしい。


そのためにできることを私も自分なりに、
精一杯考えていきたいと強く感じています。


前川 美幸(まえかわ みゆき)




一般社団法人日本グリーフ専門士協会・理事


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