【JJC通信】桜の名所<茶遊庵だより>卯月 

「茶遊庵」の案内人、山﨑小夜でございます。


卯月は、一斉に花時を迎えます。


なかでも、特に日本の花、桜は
格別です。


能の春の四季演目に
「桜川」があります。


謡曲「桜川」は茨城県桜川市に
ある桜川磯部稲村神社が舞台と
なります。


この桜川市磯部稲村神社の桜は
時期になると待ちきれず雨の
降らぬまに何度となく
見に行った私の【ふる里】の
美しく綺麗に映る特別な桜なのです。



謡曲「桜川」について

室町時代の1438年に
桜川磯部稲村神社の神主磯部裕行が
当時の関東菅領であった
足利持氏(実際は鎌倉公方)に
花見噺「桜見物語」一巻を献上しました。


その物語を目にした
第六代将軍足利義教が、
世阿弥元清に作らせたのが
謡曲「桜川」です。


常陸と下総の国司のなった
平将門の子、桜子の若の物語で、
母子の愛情物語として描かれて
おります。


子どもと離れ離れになった母が、
狂乱して子を尋ね歩く、子別れの
狂女物のひとつです。


子と母は最後の最後に巡り合う
というハッピーエンドの
物語ですが、その過程で母を
いたわる健気な子、子を一心に思う
母の人情がきめ細かく織りなされ、
見る人の胸に迫ります。



茶の湯でも、ここち良い季節になり、
炭火を遠ざけた透木釜を使い
はじめます。


この透木釜の種類に網目に桜の意匠の
桜川釜がよく使われています。


母が我が子と縁のある桜の花を
粗末にしたくないと、網で花びらを
掬っている情景を鋳込んだものです。


また、この時期には華やかに
桜の木の下で桜の茶碗と
桜ずくしの中で抹茶を一服
所望いたします。



桜川磯部稲村神社の桜について

この神社の参道や神社が鎮座する
丘の斜面に多くの山桜が見られる。


山桜は東北地方に産する白山桜で、
特に芽吹きの時は赤芽も見事、
学術的にも貴重な存在とされている。


そばにある磯部桜川公園を含んだ
周辺一帯は国の「名勝」に
指定されておりまた、神社及び
公園にある桜が国の天然記念物に
指定されております。


この地は、古来より桜の名称として
知られていたことから、江戸時代には
歴代将軍により、隅田川堤、
玉川上水など江戸の花見の名所を
作る際に植樹されています。


水戸市内を流れる桜川は、
かの水戸光圀公が当地の桜を気に入り
桜の苗木を数百本移植したことを
機に桜川と命名したものと
伝えられています。


平成30年 卯月
茶 遊 庵
案内人 山﨑小夜
 
 

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